ハッピー・トラベルデイズ:福島
2020-03-11T11:15:47+09:00
naoko_terada
トラベルジャーナリスト寺田直子の、ちょっと心やすらぐ旅だより。
Excite Blog
4年間、封印した写真に思うことは
http://naoterada.exblog.jp/29955982/
2020-03-11T07:00:00+09:00
2020-03-11T11:15:47+09:00
2020-03-10T23:52:03+09:00
naoko_terada
福島
9年前の震災以降、何度か福島を訪問してきました。たくさん写真も撮りましたが、その多くは露出していません。
できなかったからです。 上の写真もそのひとつ。
2016年に訪問したときのもので、前後の写真を見るとおそらく常磐線・富岡駅近くだと思います。地震と津波によりグニャリと曲がり、さびた線路。その先には福島原発が見える。福島の「悲惨さ」を伝える写真で、見た人もきっとそう感じるでしょう。
一度、世間に発表した被写体はあたりまえですが、当時のままの様子で人の記憶に残ります。少しずつ復興し、変化していく過程や、多くの人のさまざまな思いや希望よりも強烈にイメージとして焼き付きます。報道メディアもそんなドラマチックな写真を選んで露出し、変わりつつある日常を紹介することは少ないものです。だから、あえて当時、露出せずに封印しました。
4年たって、今この写真を載せるのは、今月14日に常磐線が全線開通するからです。福島原発の近くを通り、帰還困難地域のため富岡駅から浪江駅の間(夜ノ森駅、大野駅、双葉駅)はずっと不通でした。その区間の利用者には代行バスが運行されています。それが、3月14日に全線開通となります。同時に富岡町に出ている避難指示の一部が今日、10日に解除されました。わたしが撮ったさびた線路はもうありません。しっかりと過去のものになりました。原ノ町駅にちょうどぴっかぴかの特急「ひたち」が試運転でとまっていました。14日からは品川・上野~仙台間を3往復します。2月下旬、いわきから仙台まで常磐線と代行バスを乗り継いでたどってみました。富岡駅で電車を降り、代行バスで小高駅まで。バスは帰還困難地域を抜けて進みます。何度か通った道からの風景は変わっている場所もあれば、9年前を思わせるような場所もいまだ少なくない。復興はまだ途上だということをあらためて感じます。
バスを小高駅で下車。この駅を初めて訪れたのは2014年。当時は中に入ることができませんでした。電車が運行し駅が再開したのは2016年です。待合所も刷新されきれいになっていました。入口前に馬のオブジェがあるのに気づきました。小高といえば相馬の野馬追(のまおい) で有名ですからね。仙台方面の列車まで少し時間があったので、駅から歩いていける小高の人気店、双葉食堂さんへ。お昼時で工事関係のお兄さんやサラリーマン、ご近所さんたちでにぎわっていました。ピリ辛でボリュームたっぷりの名物もやしラーメンを注文です。双葉食堂は震災後、移転していました。その間の2014年から2016年、「おだかのひるごはん」という名前で地元のおかあさんたちが切り盛りする食堂として帰還してきた人たちのために運営されていました。震災後、この地区で初めてのお店で、わたしも一度うかがっています。「おだかのひるごはん」を立ち上げたのは復興の課題に新しい視点で取り組む小高ワーカーズベース代表の和田智行さん。小高出身で震災後、東京での仕事を捨て地元での起業にシフト。今は小高パイオニアヴィレッジ という簡易宿泊施設を兼ねたコワーキングスペースなどを運営、さまざまなケミストリーを生むイベントを開催しています。私も仲良くさせてもらっていますが、この日は乗り継ぎの時間があまりなかったのでお会いすることなく、再び駅へ向かいました。そうそう、近くには作家の柳美里さんが経営するブックカフェフルハウス があります。ちょうどリニューアル中で、3月20日に再開されるようです。残念!
風はまだ冷たいけれど、快晴の気持ちのいい日でした。次回、いつ来れるかはわからないし、力にもなれない存在だけれどこれからもこの風景を見続けていこう。電車を待ちながらそう思っていました。そして、たくさんの人に見てもらいたくなる、きれいで楽しい写真をたくさん撮りたい。
心からそう、思うのでした。
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ジミー・チュウ氏「福島コレクション」を追いかけて③ 番外編 福島円盤餃子を食べる!
http://naoterada.exblog.jp/22962817/
2014-07-16T06:46:00+09:00
2014-07-16T13:49:00+09:00
2014-07-16T06:46:51+09:00
naoko_terada
福島
実は翌日からわたしは気仙沼で行われるツアーに参加することになっていました。
そのため、この夜は一ノ関のビジネスホテルを予約していたので、その前にちょっと小腹を満たそうと。事前に情報チェックをしていた福島餃子なるものを食べるため、あたりをつけていたのでした。
知らない場所を歩き回っているとき、いつも気になるのがマンホール。
その土地の名所、イメージシンボルなどがみごとに表現されていて楽しくなります。餃子の店に行く途中に見かけたのはこれ。なかなか芸術的な意匠。福島市の鳥がシジュウカラだということ初めて知りました。
福島駅構内の観光センターで入手した「福島餃子マップ」を見ながら吟味した結果、選んだのがこちら。川鳥さんです。
焼き餃子もおいしいけれど、水餃子も自慢という店。
紫の小粋なのれんをハラリと開けて中に入り、奥へと進むと右手前にカウンター、その奥に座敷のテーブル席。
「ご予約されてますか?」の番頭さんのような方に聞かれ、「わ、そんなに人気で混んでるのね」とあわてる。
「いいえ、していないんですけど」
「あ、そう。カウンターでいいですか?」
もちろん。
カウンター上等、望むところです。
わずか5席のカウンターにはすでに常連のみなさん。餃子を「アテ」にちびりちびりと楽しんでいます。
カウンター越しに女将さんが、
「初めてですか?だったら、焼きと水餃子を10ヶずつにもできるのでお薦めですよ」
ということなので迷わずそれ。もちろんビールも一緒にたのみます。
ビールを飲みながら待つことしばし。
目の前に置かれた、これが福島名物、円盤餃子。通常は20ヶ1000円が基本。なのでこれはハーフサイズ。
それでもものすごいボリュームです。
さっそく、大きめの焼きたてをハフハフと口に入れる。モチッとした弾力ある皮の香ばしさに続いてジュワッと肉汁があふれてくる。カリッ、モチっの絶妙な味わい。肉のうま味を堪能したあと、クピっとビールを一口。
くー、たまりません。
と味わっていると、おかみさんがドンと置いてくれたのが、たっぷりと水餃子が入ったドンブリ。こちらが、川鳥名物の水餃子。
スープにとぷんとつかった水餃子をレンゲでスルっ。焼き餃子とは異なりトロンととろける厚めの皮とたっぷりの具。実に食べごたえのある水餃子です。
隣のおじさんに、「どこから来たの?」と話しかけられながら、餃子をつついてビール。
ああ、こういう旅の途中の人肌を感じる時間がたまらなく好きです。
本当はもっとゆるゆると飲んでいたいところですが、これから新幹線で一ノ関まで行かなければなりません。。おまけに込み合ってきたのでカウンター席を後から来たお客さんにゆずりましょう。
支払いをすませ、外に出たところでちょうど川鳥のご主人と遭遇。
エプロンのアンパンマンは伊達じゃありません。キュッと押すと、ご主人がアンパンマンに変身します。
写真を撮らせてくださいとお願いしたら、さっきまでの笑顔が急にひっこんでしまい、照れた表情に。そんなご主人を見ているとなんだかとっても心がほっこりと。
こんな写真になってしまいゴメンなさい。ホンモノはと~ってもカワイイ笑顔のご主人です。
「また、どうぞ来てくださいね」
そんなご主人のひとことに、福島に餃子を食べるだけのために再訪するのも悪くないな、と思ってしまう。そして、きっと行くだろうという確信も。
ありがたくもご縁をいただき、私が帰りたいと思う場所はいろいろなところにあります。
その土地を応援すると思っているものの、実はわたしのほうがそこに暮らすみなさんからの元気や励まし、気づきをいただいているのかもしれません。
ジミー・チュウ氏の存在はもちろん、川鳥さんでのご縁。
そんなことを含めて、福島もまたそのわたしの中で「帰る」場所のひとつになったように思った夜でした。
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福島から世界へ!ジミー・チュウ氏「福島コレクション」を追いかけて②
http://naoterada.exblog.jp/22923389/
2014-07-09T22:11:00+09:00
2014-07-09T22:36:13+09:00
2014-07-09T22:11:28+09:00
naoko_terada
福島
東京都内でインタビューのため、ジミー・チュウ氏にお会いしたのが4月16日。
第一印象は、「へえ、こんな方だったのね(笑)」。
ジェントルな笑顔と礼節ある対応はとても魅力的で、いっぺんにそのお人柄のファンに。
インタビューを通じて感じたのが、日本の「ものづくり」への共感。そして、次世代の若手を育てることの重要さを強調されたことでした。
今回、発表された「福島コレクション」は、チュウ氏のデザイン&製作によるオリジナル限定6足。400年の伝統を持つ「原山織物工場」産の会津木綿、世界で最も薄い絹繊維として高い評価を受ける「齋栄織物株式会社」の「川俣シルク」、卓越した伝統技術を継承する「白木屋漆器店」による会津漆器を素材として使用。ジミー・チュウらしいエレガントなスタイルの靴に仕上がっていました。
そして、18日には福島駅前、ホテル辰巳屋のバンケットで、「福島復興イベント講演会」としてチュウ氏がご登壇。
テーマは「福島から世界へ "Creativity through Skills"」。
ご自分の生い立ちから、職人としての矜持、世界へとビジネスを広げるためのノウハウなどを惜しみなく披露。現在はロンドンを拠点にオートクチュールの靴作りをする一方でクラフトマンシップ教育を後進に伝えるべく世界中を旅し続けているということ。
講演の中で、こう語ってくれました。
「私が伝えたいのは若いデザイナーたちに既存の概念を払拭して斬新なスタイル、商品を作ってもらいたいということです。
今回の福島コレクションを見てシルクやもめんを着物ではなく靴にしてもいいんだということに気づいてもらいたい。そういう発想を持ってほしいのです。
新しい発見が付加価値を生みます。
また、今回ジミー・チュウが使った素材ということで国際的にも注目されますから世界に飛び出すきっかけにもなるはずです。ぜひ、それを実現して福島から新しい伝統産業、匠の技を発信してもらいたいと願います」
「福島コレクション」は販売はされません。
6足の靴はこの日、ジミー・チュウ氏から福島県へ寄贈されました。
最初、なぜ販売しないのかと私は思いました。その問いかけに、チュウ氏は、
「販売して寄付することよりも、このコレクションから新しい発想を得て、福島のデザイナーたちが伝統工芸を活かした今までにない斬新な商品を作ってもらいたいのです。未来への可能性に期待を託します」
それが答えでした。
この日、会場には福島を拠点に活動する若いデザイナー、クリエイター、伝統工芸技術を継承する企業の方々もいらっしゃっていました。
靴職人として、またグローバルに活躍するジミー・チュウ氏の真摯なメッセージに、おおいに刺激を受けたことと思います。
熱気ある会場を見渡しながら、第二の「福島コレクション」が生まれることを期待し、そしてあらためて福島の一日でも早い復興を願わずにはいられませんでした。
日常から風化してしまう震災復興について、新しい可能性を気づかせてくれたジミー・チュウ氏。
日本、そして福島への想い、心から感謝いたします。
本当にありがとうございました。
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福島から世界へ!ジミー・チュウ氏「福島コレクション」を追いかけて①
http://naoterada.exblog.jp/22873325/
2014-07-01T16:49:00+09:00
2014-07-09T19:57:11+09:00
2014-07-01T16:49:41+09:00
naoko_terada
福島
その間も海外や国内取材を重ね、さまざまな角度からツーリズム、そして観光での地方の活性化などを考えていました。もちろん東北の復興も。
5月のブログに気仙沼と福島・相双地区をたずねたことを書きましたが、その取材報告もずっとしていませんでした。本の出版など仕事量が増えていたことが理由なのですが、その反面、少しでも早く記事をアップして多くの方に読んで、知ってもらいたいというあせりのような気持ちもずっと持ち続けていました。
でも、仕事を誠実に行い、地に足をつけて生活の基盤をゆるぎないものにしてこそ誰かの支えになることができるのだということも実感。
仕事をキチンとしてからでないとブログと向き合えないということも学びました。あたりまえのことですが。
だからあせらず。
できる範囲で少しずつ「誰かの」ために役にたつことを願いながら、
ゆっくりとブログをつづっていこうと改めて思っています。
ということで、2014年度後半がスタートした本日、7月1日。
久しぶりの更新です!
ずーっと心にとめていた福島について書いてみたいと思います。
はじまりはこの方との出会いでした。
世界的なシューデザイナー、ジミー・チュウ氏です。
正式なお名前はDATOジミー・チュウOBE教授。
DATOはマレーシアの貴族称号、OBEは大英帝国勲章の略。
さらにイギリスの国際芸術学院の名誉教授でもあります。
マレーシア・ペナンで靴職人の息子として生まれたチュウ氏。
故ダイアナ妃、アンジェリーナ・ジョリーなど世界中のセレブやハリウッドスターたちに愛される美しき靴を生み出し、今では世界トップブランドに成長。
現在はロンドンの工房で世界中からかけつける顧客のためのオートクチュールの靴を作り続けていらっしゃいます。
その彼が福島の伝統工芸を使用した「福島コレクション」を発表。そのお披露目で来日するのでインタビューを、というお話をマレーシア政府観光局からいただいたのがゴールデンウィーク前。チュウ氏はマレーシア観光大使でもあります。
都内でチュウ氏にインタビューをさせていただき、彼の福島への思いと、職人としての物づくりの哲学を語ってもらったのでした。
続く
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