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雨の日と彼の行方
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事務所の近くの中華料理店がひっそり店を閉じていた。

そこにはたまに、ひとりでの夕食、というか軽く飲みながら餃子や焼売などの単品を頼む、そんな感じで訪れていた。いたって普通の店だった。厨房にひとり、ホールには茶髪の若い男性。客とは日本語でやりとりするがどちらも中国語を話していた。

ある日、店に行くとツーリストらしい外国人グループが先客でいて、何やら茶髪の彼に質問をしていた。英語でのそれを聞くと、「この料理に肉は入っているのか」と問いかけている。どうやらベジタリアンらしい。茶髪の店員は英語が苦手だったようなので、それを通訳してあげると、「アリガトウゴザイマシタ!」と本当にホッとした様子でニッコリと笑顔を見せた。

その次に店に行くと、彼が私に気づきニカッと笑った。メニューと一緒に今まで一度も出てこなかったおしぼりが出てきた。なんだよ、あるじゃないのおしぼりと苦笑い。頼んだ紹興酒もグラスになみなみと注がれてきた。わらしべ長者の気分だ。彼なりのお礼だった。

その日から行くと彼とひとこと、ふたこと会話をするようになった。

「ア、イラッシャイ」
「今日ハヤイネ」

そんなあたりさわりのない言葉だけれど、なんとなく通うのが楽しみになっていった。

ある冬の夕方。
薄いシャツ姿の彼を見て、私が
「えー、そんな薄着じゃ寒くないの?」と聞くと。
「ダイジョウブ、けっこうアッタかいよ、ホラ」
シャツの裏をめくるとボアになっていた。
「コドモがいるから。キレイじゃないコレでイイんだ」

そうか子供がいるんだ。お父さんなんだね。

ここしばらく取材が続き、店には行っていなかった。
彼は今、どうやって暮らしているだろうか。
たくましくすでにどこかの店にもぐりこんで働いているのか。
そうであったらいいな。

シャッターが閉まった人気のない店を見た昨日から、ずっとそう思っている。
by naoko_terada | 2017-05-10 16:39 | その他 | Trackback | Comments(0)
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