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快晴の日曜日。 多くの人手でにぎわう東京駅・丸の内。 本日は、東京駅丸の内駅舎の保存・復元工事の報道公開日。 わたしも参加です。 待ちに待った東京ステーションホテルのお部屋も見せてもらるとのこと。 まずは工事事務所内でブリーフィング。 ヘルメット、安全ベスト、軍手をそれぞれお借りして、工事現場へと向かいます。 まずは外観から。 外側の防護壁がなくなり、だいぶその姿をあらわし始めた丸の内駅舎。 大正3年に誕生した東京駅は、日本銀行本店なども設計した辰野金吾の傑作。 もともとは3階建てでしたが、第二次大戦末期の空襲により屋根部分などが焼失。 耐震性の問題などで2階建ての駅舎として戦災復興工事を行い、 昭和22年に再開します。 今回、JR東日本では、復元と保存の両方を目標に工事を進めました。 その基本方針は以下のとおり。 <保存> ●1、2階の既存レンガ躯体と鉄骨および広場側1、2階の既存外壁の保存。 <復元> ●広場側、線路側の3階外壁は新躯体を設置のうえ、化粧レンガ、花崗岩、擬石で復元。 ●線路側1、2階外壁は既存モルタルを撤去、化粧レンガ、花崗岩、擬石で復元。 ●屋根は天然スレート、銅板で創建時の姿に復元。 ●ドーム3、4階の内部見上げを創建時の姿に復元。 つまり、1、2階は保存を中心に、3階部分は創建時に忠実に復元する、というもの。 化粧レンガも色の再現や、平滑さ、寸法など当時のものに近くなるようにこだわりを見せています。 銅板部分は少し、くすみ始めていますが、 これから年代を重ねるにつれて、さらに渋みを見せていくはずです。 随所に、保存されていた当時の素材を再使用しているのも印象的です。 次に内部の見学です。 まだ、工事中の施設内を通していただきます。 最初に見せていただいたのは、 東京ステーションホテルの朝食ラウンジ「アトリウム」。 ここは、ちょうど駅中央の三角になった部分という独特の空間で、9mの天井高が開放的。ルーブルみたい。 現況、まだ、工事中なので完成ではありません。 ここにテーブル席が配されますが、 贅沢にも当分はゲストオンリーの朝食ルーム兼ライブラリーになるとのこと。 おもしろいのは、壁の一部が開業当時、つまり大正3年時のレンガのままになっていること。 歴史をくぐってきた存在は、どんな一流の絵画や調度品よりも、 多くのことを物語ってくれます。 それをさらに実感するのが、東京ステーションギャラリー。 以前にもギャラリーはありましたが、今回はさらに拡張。 加えて、「アトリウム」同様に創業時のレンガと、鉄骨の一部を大胆に意匠。 レンガは国内初の機械式煉瓦工場があった深谷で焼かれたもので、 鉄骨の大半は八幡製鉄所製、一部が英国社製で、 ギャラリー入口には、社名の刻印を見ることができます。 こんな風にまだ、工事中の職人さんたちの脇を抜けて...。 いよいよ、おまちかねの客室です。 入った途端、それまでの工事現場から世界が反転、 同行のメディア陣から一斉に歓声がわき起こります。 もちろん、わたしも。 事前の資料でイメージは見せてもらっていましたが、 実際の客室を見ると、そのエレガントさがみずみずしく際立ちます。 今回は、特徴的なふたつのカテゴリーで、こちらが2階にある丸の内側の「パレスサイド」。今はまだ工事中ですが、窓の外に行幸通り、丸ビル&新丸ビルが見渡せます。 40㎡と都内の高級ホテルに比べると狭いのですが、 それを感じさせないのは、このホテルの何よりも大きな特徴の3.7mの天井高。 ヨーロッパの高級ホテルのような雰囲気が漂います。 しかし、デザイン性のなんとも優美なこと。 ミニマル、グラマラスといったコンテンポラリーな最新ホテルが多い中、 この上品なカラースキームの端正さは別格です。 カーテン、カーペット、ドアノブなどを見ても上質なものを採用しているのがわかります。 今回、東京ステーションホテルのデザインを担当したのは、 英国のRichmond International。 ロンドンの名門、サヴォイ・ホテルの改装や、ヴェルサイユのトリアノン・パレス&スパなど、世界各国のラグジュアリーなホテル&リゾートを手がける著名なインテリアデザイン会社。 彼らが得意とする洗練されたデザイン性と、クラシックエレガンスのとけあった華やかさは、東京ステーションホテルの歴史と伝統をみごとに、現代によみがえらせました。 こだわりは細部にも宿ります。 ベッドはシモンズ社製。 それも、厚み8.25インチ(約21cm!)のプレミアムクラスを採用。 アメニティは英国ギルクリスト&ソームズ社製。 ミニバーはまだ、中身は未定だそうですが、 From Aquaは決定だそう♪ そして、次が「ドームサイド」というカテゴリー。 広さは44㎡で、天井までの高さは最も高く4m。 南と北にあるドームを囲むような作りで、窓の外を見ると。 創設時そのままに復元されたドーム内部が天空に。 ほうっと、ため息がもれます。 モノクロの写真は、当時のもの。 花飾りレリーフや、干支の動物たちのレリーフ、約2.4mにもなるワシの彫刻、豊臣秀吉の兜を模したキーストーンなど。どれも、創建時のままによみがえりました。 モノクロの決して鮮明ではない当時の資料をもとに、 色、形などを丁寧に再現するのには苦労されたそう。 なかでも干支のイノシシは、上の写真のようにまったくわからないほど不鮮明(笑)。 よくこれで、みごとに再現したものです。 午後の光がドームに移りこみ、美しい。 まだ、カバーがかかり階下からは見えませんが、古くて新しい、東京の名所になることは間違いないでしょう。 2007年から保存・復元が進められてきた東京駅丸の内駅舎。 グランドオープンは10月3日ですが、6月3日から、 丸の内北口の改札や、券売機、トイレなどが順次、使用開始となります。 (南北ドーム、ホテル、ギャラリーは10月開業の予定)。 東京の新しい顔が、間もなくその表情をあらわします。
by naoko_terada
| 2012-05-27 21:03
| 日本
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Comments(8)
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izola at 2012-05-27 21:12
う〜ん、写真だけでもウットリ・・・♪
当時の意匠を忠実に再現しつつ、現代のエレガンスを見事に 溶け込ませた素晴らしい空間ですね。 旧いものは全部壊して新しくしてしまう方が余程簡単ですが こうして歴史と誇りを美しく後世に残してもらえるのは とても嬉しく有難い事です。 秋の開業が楽しみです!
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naoko_terada at 2012-05-28 13:19
izolaちゃん
まだ、モックアップのお部屋しか見ることができませんでしたが、かなり良いです!テイストはFS椿山荘、RC大阪に似ていますが、より最先端のエッセンスが。izolaちゃん、きっと好きだと断言しちゃいま~す。秋のお江戸訪問時にぜひ♥
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ホテレス久保
at 2012-06-06 17:23
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あれー??寺田さんいらっしゃったんですか!?素晴らしかったですねえ。
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naoko_terada at 2012-06-07 11:35
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豊臣ばんざい
at 2012-10-01 15:20
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naoko_terada at 2012-10-02 00:15
豊臣ばんざいサマ
はじめまして。 すみません。ご指摘、ありがとうございます。徳川秀吉。ありえないですね。おはずかしい限りです。完全にわたしの間違いです。 不愉快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありません。 訂正させていただきました。 ご確認よろしくお願いいたします。 どうぞ、よろしくお願いいたします。
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ポイポイ
at 2012-10-03 03:26
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はじめまして。
突然ですが、この間テレビで都市伝説についてやってまして 内容が「明治維新は秀吉の復讐」ってやつで、戦争に勝利した薩長は豊臣家の者で、300年越しに徳川への復讐を果たし悲願の天下をとり その薩長同盟から明治政府をつくり今に至るというものです 証拠として現在、日本政府がつかっている「桐の紋」は秀吉が使っていたものだと・・・まあ、へ~って感じだったんですけど ここにきて東京駅の「秀吉の兜」って・・・ドギマギしますね
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naoko_terada at 2012-10-04 10:19
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筆者のプロフィール
寺田直子(てらだなおこ)
トラベルジャーナリスト。旅歴30年。訪れた国は90ヶ国超え。女性誌、旅行サイト、新聞、週刊誌などで紀行文、旅情報などを執筆。独自の視点とトレンドを考えた斬新な切り口には定評あり。日本の観光活性化にも尽力。著書に「ホテルブランド物語」(角川書店)」、「泣くために旅に出よう」(実業之日本社)、「フランスの美しい村を歩く」(東海教育研究所)など。 問い合わせメール happytraveldays@aol.com インスタグラム Happy Travel Days 寺田直子 ツイッター ブログパーツ
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